chariot0727のブログ

試験的にnoteと並行運用中。

飼いならされたガリのように

今週のお題「寿司」

 

全てに倦み疲れ、一月ほど引きこもり生活を体験したのち、俺は再び社会に復帰した。時給は下がったが仕事を辞めて、仕事を変えて正解だった。夜勤は、きつかった。仕事の内容がきつかったわけじゃない。社会の奥底で、日の目を浴びることもなく、粛粛と生をこなす日々が、きつかった。自販機のうすぼけた光に安らぎを感じた瞬間が俺には確かにあった。確かにあったそれがいったいどんなだったのか、今となってはもうよく思い出すことができない。

仕事を変えたおかげで、俺は寿司を食えるようになった。寿司があるということ、寿司が食えるということを、俺は久しく忘れていた。八時になる少し前に家を出て、スーパーについたときには、ワゴンにわびしく半額シールが鎮座しているというわけだ。寿司がないときもあるけれど、寿司があるときは寿司を買う。それと、缶ビールを一本買う。それ以外は買わない。少しでも気を許したら、目に入る食い物すべてをかごに入れてしまいかねない。大丈夫、俺には寿司がある。ビールもある。それ以上何が要る?

寿司が食えるおかげで、俺はいまようやく人間らしい生活を手にすることができたのである。何か違うことを考え出しそうになったら、すぐにビールを流し込むめばいい。何も考えることはない。ただ寿司とビールだけあればいい。毎日同じものがあればいい。何も変わらなければいい。ほろ酔いのまま床に就けばいい。そうやって幸せを味わい続けていればいい。生きていればいい。